院長からのご挨拶

宮本町中央診療所



「月刊Just Health」2000年7月1日(法研)

YAMAIなるほど講座

クラミジア感染症  若い世代の感染者が急激に増加中…

 

1987年ごろからふえ方が目立ってきたクラミジア感染症。最近は10代の若者に急増していることが厚生省の調査でわかりました。自覚症状が乏しいために治療が遅れ感染が拡大…。正しい知識を身につけることがクラミジア感染症の予防の決め手です。

 
 


自覚症状が乏しいために治療が遅れて感染が拡大

性の自由化が進み、とくに若い世代の警戒心が薄れている昨今、STD(性感染症)がひそかにふえつづけています。STDは性行為によってうつる病気、約20種類の総称ですが、なかでも今、最も蔓延しているのがクラミジア感染症です。
「クラミジアや性器ヘルペスにかかっている女性は、男性の約2.5倍という報告もあります。最近は、知らないうちに家庭に入りこんでいるケースが多いようですね。」(尾上先生)
尾上先生は一般の人たち、とくに若い女性への感染の拡大を心配します。
クラミジアに感染すると、男性の場合、尿道から(うみ)がでて、痛みやかゆみなどの不快感を伴います。排尿のときに体外にでてしまい、自然と治るケースもありますが、放っておくと、尿道炎、前立腺炎、副こう丸炎などをひきおこすなど、症状が悪化します。


女性がクラミジアに感染すると不妊症や母子感染の原因に…

女性はおりものがふえたり、子宮頸菅(けいかん)炎をおこしたりしますが、ほとんどの場合、自覚症状がありません。
「怖いのは、感染していることに気づかないで放置している人が意外に多いこと。そのために知らない間にパートナーにうつしてしまったり、治療が遅れて後遺症を残してしまうこともあります。」
切実なのは、不妊症や母子感染の原因になってしまうことです。
子宮頸管や子宮内膜の炎症が広がって卵管が詰まるなどで、(らん)が子宮に下りられなくなり、受精が難しくなります。
「たとえ妊娠しても子宮外妊娠や流産、早産の危険性が高いうえに、生まれてくる子どもに感染し、重い合併症をもたらすこともあります。そんな大変なことになる前に、とにかく自発的に検査を受けてほしいですね。」と尾上先生は語ります。


「ピンポン感染」を防ぐ決め手はパートナーと一緒の検査・治療

将来、後悔しないためにも、安全な性行為で予防を心がけたいものです。安全な性行為の原則はパートナーを特定の人に決めることと、コンドームを使うこと。しかし、性器以外の部分に感染している場合もあるので、コンドームは予防策として万全とはいえません。たとえば、のどにもクラミジアが寄生している場合、オーラル・セックスでも感染してしまうのです。

「パートナーと一緒に検査・治療することも不可欠。クラミジアはピンポン感染(ピンポン玉のように行き来すること)するので、片方だけ治療しても、いつまでも治りません。」
症状に気づいても検査を躊躇(ちゅうちょ)する人が多いようですが、今は痛みを伴わない新しい検査方法が主流になり、簡単な尿検査で済む場合もあります。治療も抗生物質の服用により、2〜3週間でほとんど治ります。
大切なことは、症状がなくても思いあたるときは定期的に検査を受け、感染していれば早めに治療することです。


クラミジア感染症って何?

クラミジアにはいくつかの種類がありますが、性行為で感染するのは「クラミジア・トラコマティス」という微生物で、大きさは0.3ミクロン。感染すると、男性は2週間〜1カ月以内に尿道から微量の膿がで始めます。女性の場合、おりものが多少ふえる程度で自覚症状はほとんどありません。治療せずに放っておくと、男性では副こう丸炎、女性では卵管炎などをひきおこし、ともに不妊症の原因となります。検査は採尿だけで診断する痛みを伴わない新しい検査法が主流。抗生物質を2〜3週間服用することで完治します。パートナーの片方だけが治しても、もう片方が治さない限り再び感染します(ピンポン感染)。検査・治療はパートナーと一緒に受けましょう。


感染防止の「3カ条」は?
パートナーを特定してコンドームを正しく使用
  パートナーは特定の人に決めること。コンドームを正しく使うこと(ただし、オーラルセックスでも感染する場合もあるので、コンドームは最初から最後までつけよう。コンドームを過信してはいけない。)

症状がなくても不安なら検査を受けよう
  尿で簡単に検査ができるようになった

感染がわかったらすみやかに治療を受ける
  パートナーと一緒に受けることが不可欠